ニュースの概要
政府が、AIの活用を妨げている国の規制や制度について、広く民間から意見を集める取り組みを始めました。専用の投稿フォームを開設し、企業や自治体、個人が日々の業務で感じている「ここがネックだ」という声を直接受け付けます。書面での提出、対面での確認、資格者の常駐といった、AI導入前提で作られていない決まりごとが念頭にあります。集まった意見は、規制を所管する省庁での検討や、制度の見直しの材料として使われる見通しです。AIを国の成長戦略の柱に据える中で、法律をつくる側が現場の摩擦を直接聞きにいく構えを見せた形になります。
引用元: AI活用を邪魔する「国の規制」ありませんか? --政府が意見募集へ 専用フォーム開設(CNET Japan)
分析・見解
規制の多くはAIを想定せずに作られている
AI活用の壁と聞くと、AIそのものを縛る新しい法律を思い浮かべがちです。しかし現場で実際に引っかかるのは、もっと古い決まりごとです。たとえば「書面で交付すること」「担当者が目視で確認すること」「有資格者が常にその場にいること」といった条文です。これらは数十年前に、人が手作業で行う前提で作られました。
AIが書類を読み、画像を判定し、問い合わせに答えられるようになっても、条文が人の関与を字句どおりに求めている限り、導入しても効果が半減します。AIを入れたのに、最後に人が全件を確認する手間が残る。この構図が、多くの企業で投資対効果を削っています。
意見募集は過去の規制改革と何が違うのか
日本では、規制改革の提案窓口が以前から何度も設けられてきました。ただし多くは分野を限らない総合窓口で、提案が抽象的になりやすく、担当省庁が「現行法で対応可能」と回答して終わる例も目立ちました。
今回はAI活用というテーマを絞った窓口です。テーマが絞られると、投稿する側も「この条文のこの一文が、この業務の自動化を止めている」と具体的に書きやすくなります。国が条文単位の情報を大量に集められる点が、従来との違いです。ここで集まるのは、法律の専門家が机上で探しても見つけにくい、現場固有の摩擦です。
見直しが進むかどうかは、意見の質と集まり方で決まる
意見募集は始まりに過ぎません。過去の例では、同じ指摘が複数の企業から重なった項目ほど、見直しの俎上に載りやすい傾向がありました。逆に、一社だけの特殊な事情は、個別の相談扱いで終わりがちです。
海外に目を向けると、英国は新しい技術を限定的に試せる「規制の砂場(サンドボックス)」を金融分野で先行させ、のちに他分野へ広げました。日本にも同様の制度はありますが、申請の手間が重く、利用が伸びていません。今回の募集で、制度そのものの使いにくさが指摘されるかどうかも、見るべき点です。
独自の視点として、規制は禁止だけでなく安心の土台でもある
規制を一方的に悪者にするのは危険です。医療や金融、建築の分野では、人の確認義務が事故を防いできた歴史があります。AIが誤る確率がゼロでない以上、確認を外す議論には必ず安全の裏付けが要ります。
狙うべきは、人の確認を全面的に廃止することではありません。AIが一次判定を行い、人は例外だけを見る、という形に条文の読み方を更新することです。その線引きを、事故の記録や精度の検証データとセットで示せる企業の意見ほど、行政にとって採用しやすい提案になります。
ビジネスへの影響
自社の業務を条文まで掘り下げて棚卸しする
まず、社内でAI導入が思うように進まなかった案件を洗い出してください。理由が「技術が未成熟」ではなく「書面が必要」「対面確認が必要」「資格者の立会いが必要」だった案件は、今回の募集の対象になり得ます。
投稿の際は、所管省庁、根拠となる法令や通達の名前、止まっている業務の内容、年間の手作業時間をできるだけ数字で添えると、行政側が検討に着手しやすくなります。感想ではなく、再現できる事実を書くことが肝心です。
業界団体や取引先と声をそろえる
一社の意見は個別事情として扱われやすい一方、同じ指摘が複数から届けば、制度の問題として扱われます。業界団体の担当者や、同じ課題を抱える取引先と、事前に投稿内容をすり合わせておくと効果的です。
提案には、代替の安全策も併せて書いてください。たとえば「目視確認を廃止してほしい」ではなく「AI判定の精度が九十九パーセント以上で、残りは人が確認する運用を認めてほしい」といった形です。行政が合意しやすい落としどころを示すほど、実現の可能性が上がります。
規制見直しを待たずに進められる準備をしておく
見直しには年単位の時間がかかります。待っている間も、AI判定の記録を残す、人が確認した件数と誤りの件数を継続的に集計する、といった準備は進められます。規制が緩んだ瞬間に切り替えられる企業と、そこから検証を始める企業とでは、先行できる期間に差が出ます。まずは小さな業務一つで、記録の取り方を整えることから始めてください。