1.6兆パラメーターのLongCat-2.5が示す、AI開発支援の次の競争軸

1.6兆パラメーターのLongCat-2.5が示す、AI開発支援の次の競争軸

ニュースの概要

中国の出前・生活サービス大手、美団のLongCatチームが、新しいAIモデル「LongCat-2.5」を発表した。全体のパラメーター数(=AIの頭脳の規模を示す数値)は1.6兆。ただし1回の処理で実際に動くのは約480億分だけという設計である。文章と画像を最初から一つのモデルで扱う方式で、長時間にわたるプログラム開発、見た目を伴うコーディング、デザイン制作、3Dの制作といった作業を想定している。大規模な開発や、何段階もある作業を、AIが途中で止まらず続けて実行できることを狙った製品である。外食や配達の会社が、最先端のAI開発に本腰を入れていることを示す発表といえる。

引用元: 美団、1.6兆パラメーターのマルチモーダルエージェントモデル「LongCat-2.5」を展開(AI Native Foundation / TechNode / AI Weekly)

分析・見解

規模の数字より、1回で動く480億に注目する

1.6兆という数字は目を引く。しかし実務で意味を持つのは、1回の処理で動く約480億のほうである。

これは「専門家の集団から、必要な数人だけを呼ぶ」仕組み(=MoE、混合専門家方式)に当たる。全体の知識量は大きいまま、1回あたりの計算量は抑えられる。つまり、回答の速さと利用料金を左右するのは総量ではなく、実際に動く部分の大きさである。数字を比べるときは、この二つを分けて見る必要がある。

画像と文章を最初から一緒に学ぶ意味

従来は、文章用のAIに画像用の部品を後付けする作り方が多かった。LongCat-2.5は、最初から両方を一体で学ぶ作り方を採るという。

画面の見た目を直す作業を考えると、違いが分かりやすい。文章だけのAIは、画面を言葉で説明してもらわないと崩れ方が分からない。画像も読めるAIなら、崩れた画面を直接見て、どのコードを直すべきかを判断できる。デザインや3D制作が対象に入っているのは、こうした見て直す作業を一つの流れで任せたいからである。

長く続けられることが、本当の競争点になる

今のコーディング用AIは、短い課題ならこなせる。弱いのは、数時間かかる作業で途中の方針を忘れたり、同じ失敗を繰り返したりする点だ。

米国の大手各社も、ここ1年は同じ方向に進んでいる。1回の回答の賢さから、長い作業をやり遂げる持久力へ、競争の軸が移った。美団の発表も、その流れの上にある。ただし、持久力は公開された得点表だけでは測りにくい。自社の実際の作業で試すまで、優劣は断定できない。

出前の会社がなぜ最先端のAIを作るのか

独自の視点を一つ挙げる。美団は膨大な数の店舗ページ、地図、配達の仕組みを自社で作り続けてきた。つまり、開発する画面と作業の量が極めて多い会社である。

AIを売る前に、まず自社の巨大な開発現場で使い込める。この点は、研究だけが本業の会社にはない強みだ。自社で使って磨いたものを外へ出す。この順序が成り立つ会社は、世界でも多くない。

ビジネスへの影響

乗り換えではなく、試験導入の枠を作る

今すぐ既存のAIを切り替える必要はない。おすすめは、小さな試験枠を一つ持つことだ。

例えば、既存の画面の不具合修正を5件選び、現在使っているAIと新しいモデルに同じ依頼を出す。かかった時間、修正の正しさ、人が直した量を記録する。この程度の比較なら、1〜2週間で結論が出る。

契約と情報管理は性能より先に確認する

中国企業のモデルを使う場合、確認すべき点は性能の前にある。入力した内容がどこに保存されるか、学習に使われるか、社内の規程で外部送信が許されるか。この三点だ。

顧客情報や未公開のソースコードを扱う業務では、いきなり使わない。公開済みの情報や、ダミーのデータで試すのが安全である。社内で利用の範囲を文書にしておくと、後で迷わない。

複数のAIを使い分ける体制が最も強い

1社のAIに依存すると、料金改定や障害、提供条件の変更に弱くなる。画像を含む作業、長い作業、短い質問と、用途ごとに使うAIを分ける設計が安全だ。

AIが入れ替わっても業務の手順が壊れないよう、依頼の書き方や確認の手順は、特定のAIに依存しない形で社内に残しておきたい。

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